記者の手記

異世界からの訪問者

_”水鏡地区”、”水鏡学園”。
この地域は近隣の市町村とは違う文化があると聞き、滞在しながら調査していくことにした。
しかし、この地区は不思議で不気味なものが多いみたいだ。

この手記は ”水鏡地区”、”水鏡学園” にまつわる様々な噂、文化などを調査したメモである。

_追放される前に届けばいいのだが…。

葉月_十五日。

自宅から新幹線や在来線を乗り継ぎ、”水鏡地区”に到着した。
今日泊まるのは水明村にある水泡駅前の宿泊施設。
昔ながらの趣があり、女将さんも素敵な方でサービスも良い。
チェックインを済ませ、部屋に入って気づいたことを書き記しておく。

1.日付の月の数え方は和名。
地元では8月というが、この地域では和名の葉月というそうだ。
カレンダーも和名の表示になる。

2.時間の数え方も昔のもの。
江戸時代で使われていた時刻の数え方と同じであるが少し異なる。
午前零時を子の刻と表すのは変わらないが、深夜二時を亥の刻、深夜四時を戌の刻…と逆回りで進行していく。
そして午前のことを”前鏡”、午後のことを”後鏡”と呼ぶ。(正午はそのまま呼ぶらしい。)

3.深夜2時頃には気を付けてくださいと女将さんから聞いた。
夜、深夜2時頃。鈴の音、高下駄であるく音が聞こえたら”水鏡様のお迎え”というものらしい。
その為、深夜1時頃。各地のサイレンが鳴り、地域放送で「外に出ないでください。窓を閉め、カーテンを閉めて下さい。」と呼びかける声が聞こえる。
 ”水鏡様のお迎え”は毎日起こるものではなく、水鏡様に関する特別な何かがある前日に行われるらしい。
お迎えされた人はどうなるのか。そして、水鏡様が実際存在するのか調査をする必要がありそうだ。

葉月_十七日。

今日は宿泊施設を中心に水明村を探索してみることにした。

まずは水明村の中心街。
ぱっと見、不自然な物などはなく、地元の雰囲気と似ているが、御土産屋には必ずと言っていいほど「鏡」が売られている。(→お守りとかなのか?)
街並みは古風な家屋が多く、水明村の住民は皆、和服であった。
翠明屋(御土産屋)の店主に話ができたため、その会話の内容を書いておく。

『(記者)この村の人たちは皆、普段から和服を着ているんですか?』
「(翠明屋の店主)これが一番ラクなのよねぇ…、それに着慣れておいたほうが何かと好さそうじゃない…?」
『…、水鏡様関連ですか?』
「水鏡様のお召し物も和服らしいと聞いてねぇ…、先日、お連れになったお方のお手紙に "紅色の振袖" って書かれてたそうなのよ…!
昔から白無垢だとか、振袖だとか言われてたのもあってね、それで皆さん和服着てるんじゃないかねぇ…?」
『和服着ていると出会いやすいとかあるんですか?」
「それはどうか分からないけども、水鏡様がお連れになったお方が多いといわれているのは此処の水明村と、御鏡町なんですって…。」
『御鏡町も何か水鏡様に関係するものがあるのかもしれませんね…。お話、ありがとうございます。』
「いえいえ、”貴方様ニ水鏡様ノ御加護ガアランコトヲ" 。」

最後、見送るときに店主が放った言葉に違和感があった。
水鏡様に関連することを探っていた自分に対して、印をつけるような、鋭い目付きを感じた。

これは早急に撤退しなければならないのかもしれない。

長月_五日。

水明村を探索してから時間がたってしまったが、調査を再開しようと思う。
水鏡地区に来てから、水鏡学園高等部に掛け合って、やっと立ち入り許可が下りた。

水明村の宿泊施設の最寄り駅である水泡駅から水鏡線で一本の水鏡学園前駅。
水泡駅から乗換無しで約一時間程度であった。
水鏡学園前駅から4番バス乗り場の「みかがみバス」に乗換。そこから15分乗り、水鏡学園高等部東門で降りた。

広大な敷地の中は自然豊かになっており、中心部に校舎が二棟立っている。
創立×××年とは思えない程綺麗な建物であり、昔の建造物というよりか現代に合わせたような造りをしている。
昔に設立されたのにもかかわらず、現代に沿った建物なのは水鏡様関連の幻想なのだろうか。

調査は二日間に分けてもいいという許可を頂いたので、今日探索したところを書き記していく。
(今日は校庭や中庭、裏庭などの外。)

1.西門
水鏡学園高等部には正門、東門、北門が存在しており、生徒たちの出入りが可能なのはその3つである。
しかし、学園の西側には西門があり、他の3つの門とは造りが違う。
正門などの生徒の出入りが可能な門は地元の学校と同じ、横にスライドするような開閉可能な門である。
西門は神社や寺(阿形、吽形がいるところ)の門と同じ造りであり、開閉ができないように門は閉じ、開けることができないように南京錠や木を窪みに差し、押してもびくともしないようになっている。
もしかしたら方位除けや鬼門などに関係するのかもしれない。
西門の近くには小さな鳥居があり、祠があった。
誰か来ているのか分からないが周辺には苔や草は生えておらず、お供え物もまだ新しいものであった。
明日も見てみようと思う。

2.中庭
昇降口の近くにある扉からいける中庭。
校舎に囲まれているものの、広く、小さめな畑や日が良く当たる場所にベンチがあるなど、出入りは自由そうである。
その中庭には日中を通して陽の光も月の光も当たらない場所がある。
そこに西門で見たのと同じ祠があった。周辺に苔や草が生えていなく、お供え物の向きも種類も全て同じ。
何かが可笑しい。

3.敷地内の自然
各門から校舎まではバスなどの出入りがしやすいように道が整備されている。
その道から外れ、木々が生えているところに向かってみる。
枯れ葉などでできる山特有の凸凹があり、下を見ながら進むと近くを走る車の音も、学校の音も聞こえなくなった。
顔を上げ、周りを見渡すも学校などはなく、樹海のような景色が広がっている。
携帯の電波も届かず、圏外の表示。
近くで聞こえた "此方" と呼ぶ声。嫌な予感がしたため、逆方向に走っていくと手首を掴まれた。
気を失う前に見たのは狐のお面を被った和服を着ている人型のナニカであった。
外で烏の鳴き声が聞こえ、目を開けると校長室のソファーの上。
『起キマシタカ。モウ、彼方ニハイカナイデクダサイネ。』
真っ暗な中で聞こえる御年輩の男性の声。
敷地内にある自然はもしかしたら何かが眠っているのかもしれない。

その日はその後調査は続けずに水明村の宿泊施設に戻った。

そういえば、水鏡学園高等部には校長先生は不在なはずだ。
あの声は誰なのだろう。

長月_六日。

今日も一時間半程度かけて水鏡学園高等部にやってきた。
昨日は外の調査だったので今日は建物の内部の調査をしようと思う。

水鏡学園にまつわる様々な記事を読んでいた時に書かれていたところをメインに調査をしていく。

1.寮
水鏡学園高等部の寮には管理人がいないとのう噂がある。
まず生徒寮は一階にはエントランスと共有スペース、乾燥機など共同で使えるものが揃っていた。
二階からそれぞれの個室になるらしく、床はグレーのカーペットが敷いており、壁や天井は白で統一されていた。
何処を見ても埃一つなく、生徒の部屋の前には荷物が置いてあるなど誰かがいそうな気配を感じる。
一階に戻るとエントランスから寮の裏側に出られる通路があった。室内から見ると外に繋がる道だが、扉から外に出ると何やら人の気配がした。
だが人影もなければ声も匂いもしない。あるのは気配だけだった。
景色はというと覚えていない。真っ黒だったような、普通の部屋だったような。
そこだけ切り抜かれたように思い出せない。
教師寮は生徒寮から離れており、安易に行き来ができないようになっている。
教師寮の一階部分はリビングの最奥部にコーヒーメーカーやお酒の貯蔵スペースなどがあり、カフェやバーのようになっている以外は生徒寮と変わらない。
二階は床に黒のカーペットが敷いてあり、内装も大人びたような少し苦めな色合いだ。廊下の両端には大きな窓があり、気分転換にはうってつけだという。

2.校舎
それぞれのクラスの教室がある「教室棟」、化学室など選択科目などで使う教室がある「講義棟」という二つがあり、二階と四階が渡り廊下で繋がっている。
講義棟の何処かに神棚が存在する部屋があるそうだが、どの教室を見ても神棚は存在しなかった。
でまかせなのか、または何かしら順を追っていかないと辿り着かないものなのかもしれない。


此処からは昨日気になった個所をもう一度探ってみた。

1.西門、中庭
昨日確認した祠。
今日見に行ったが何方にもなかった。またどこか違う場所にあるのかもしれない。

2.裏庭
昨日の調査忘れ。
裏庭には鏡池という池がある。碧氷山の湧き水が地下を通り此処に出てきたという。
その為、水深が深めで入れないように頑丈な柵で囲われている。
この池は絵の具やペンキで汚してもすぐに綺麗な透明に戻ると言われている。
ぱっと見、何もなさそうではあるが、池の真ん中に赤色の彼岸花が浮いていたのが気になる。

3.校舎近くの用具入れ
体育の授業で使わなくなった器具、学園の修復などで使う機械がしまわれている場所。
雑に入れても扉を開けるころには綺麗に整頓されており、埃一つない。
試しに器具を少しずらし、扉を閉めて開けると元の位置に戻っていた。
誰かいるという気配はしない。本当、不思議なものだ。

これにて水鏡学園高等部の調査は終了。
また、許可が取れたら色々探ってみたいものだ。

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